『目は口ほどに物を言う』と言いますが、
犬の場合はしゃべれない分、視線には特別な意味があるようです。
【まっすぐに視線を合わせる】
犬が見開いた目でまっすぐに相手を見すえるのは威嚇や優位性の表現、あるいは攻撃に出るぞという宣言です。
優位な犬や狼は劣位の相手に近づくとまっすぐに凝視します。
劣位の犬は視線をそらし、顔をそむけ、地面に伏せて服従的な姿勢をとることが多いのです。
直視しても相手から反応がないと、対立の度合いが高まります。
というわけで、この凝視は
『ここでは、わたしがボスだ、おまえは引っ込め!目ざわりだ!その目つきをやめろ!さもないと後悔することになるぞ!』と解釈できます。
面白いことに、犬は人間の行動をコントロールするために凝視を使うことがあります。
夕食の食卓でみんなが集まって何かを食べているときに、よくその光景を見かけます。
犬はそのそばに座りこんで人をじっと見つめ、人が食べているものに視線を移します。
これは明らかに食べ物を手に入れようとする行為で、子犬のときはとくに効きめがあります。
人は犬の目つきを
『あわれっぽい』『ものほしげ』『訴えている』などと解釈し、
少しばかりおすそわけを与えます。
しかし、犬からすると、じっと見つめることで支配性を主張しているです。
それに反応して
犬に望むものを与えると、犬はあなたが服従的な態度をとったと解釈し、自分は群れの中であなたより高い順位を認められた
と考えるのです。
これは大型犬の場合は危険な先例を作り、小型犬の場合でも問題の種をまくことになります。
犬を従わせるには、あなたがリーダーになること、少なくとも順位が上になることが肝心なのに、言うことをきかない犬を作りあげてしまうのです。
この例が示すとおり、どんな反応をする場合も、まずあらかじめ犬が何を求めているかを知っておく必要があるのです。
そして知らない犬を直視することも、要注意です。
支配的な犬をじっと見つめると攻撃と受けとられ、怯えた大を見つめると、恐怖心をあおって逆襲されかねない。
だけど、自分の犬の場合は、しつけのさいに凝視を使うと効き目があります。
犬の目をじっと見すえることで、困った行動をやめさせられる場合も多いのです。
たいていの犬はあなたの愛情を取り戻そうとして、和解を求める服従的な態度で反応するでしょう。
【相手と視線が合わないように、目をそらせる】
直視が威嚇だとすれば、視線をそらせるは、服従ないし恐怖を表わす信号になるでしょう。
犬の場合は、たしかにそれが言えます。
支配的な犬と対面した犬は目をそらせます。
たいていは視線を落とし、
『あなたがボスだと認めます。面倒は起こしたくありません。』
と言いたげな動きをします。
【まばたき】
たいていの動物がまばたきをします。
犬の場合は、まばたきが服従の信号にもなります。
対決の場面では、『最初にまばたきをしたほうが降参』するのがふつうです。
犬のコミュニケーションでは、まばたきは相手の威嚇的な凝視をかわし、服従を示す役割をします。
ただし、相手に優位をゆずる表現ではあっても、視線をそらす行為ほど服従的ではないのです。
というわけで、まばたきは、
『負けはしないが、あなたがリーダーだと認めよう』であり、
『かんべんしてください、あなたの指示に従います』とは違います。
犬が目で訴えることは想像以上に多いですね。
『犬語の話し方』スタンレー・コリン著より引用