ある家族と犬の話です。
2世帯住宅の1階におじいちゃん。
2階に息子夫婦と娘が住んでいました。
おばあちゃんを先に亡くし、おじいちゃんが新しい家族に迎えたのは、子犬のゴールデンレトリバーでした。
大型犬なので世話が出来ないであろうと、息子夫婦は大反対。
でも、おじいちゃんは一人で面倒を見ると言って聞かず一緒に暮らし始めました。
ボブと名づけ、寝起きを共にして可愛がりました。
宣言通りおじいちゃんは一人で世話としつけを続け、ボブは元気に大きくなりました。
拾い食いをしたりすることなどもありましたが、おじいちゃんはボブに『危険だということ』『病気になったらおじいちゃんが悲しむこと』などなど時間をかけて言って聞かせました。
その時は3時間も話して聞かせたようです。
その後、ホブが拾い食いをすることはありませんでした。
ボブが来てからおじいちゃんは性格も明るくなり毎日散歩するので元気にもなりました。
おじいちゃんはボブを相手に縁側で、亡き妻おばあちゃんの思い出を語るのが日課でした。
しかし、ボブとおじいちゃんの至福のひとときは長くは続きませんでした。
ボブが3歳になった頃、おじいちゃんは急性心不全で倒れ帰らぬ人となりました。
しばらくボブはおじいちゃんが帰ってくるものだと寂しそうに待っていました。
でも、もう帰ってこないと悟ったのか、庭につながれたまま昼間は縁側の上で過ごし、夜は縁側の下で寝ました。
あるとき、事件が起こりました。
おじいちゃんの住んでいた1階を改築しようと業者の人と話すのに縁側のジャマな場所にいたので、娘さんがボブを引っ張ると『ガブッ!』と噛みつきました。
8針も縫う怪我をしました。
それ以来、ボブは近づくと怒って唸るので、大人しい犬だと思っていた家族もおっかなビックリの接し方になりました。
しかし、それではマズイと家族で犬の勉強をして接し方やシツケをしながら仲良く暮らせるようになりました。
ボブは午後は縁側の上で過ごし、夕方は庭に降りて散歩を待つのが日課となりました。
ある日、縁側の上で寝ているボブを早めに散歩に連れ出そうとママさんが引っ張ると、ボブは怒ってママさんに噛みつきました。
幸い軽傷でしたが、怒ったボブは興奮が収まらず夜までダレも近づけませんでした。
ようやく安心して接することが出来る犬になったと思ったのに家族は困り果てて、訓練士さんに相談しました。
ボブの様子を1日観察した訓練士さんはあることに気づきました。
ボブは、縁側の上に居る時とてもリラックスして穏やかな顔をしているのです。
毎日毎日、縁側でおじいちゃんと一緒に過ごした時間がボブの中では幸せな記憶なのでしょう。
ママさんや娘さんに噛み付いたのは、縁側の上からボブを無理やりどかそうとしたときで、それは、おじいちゃんとの幸せな記憶に浸っていた時なのです。
それ以来、ボブが縁側に居るときは、そぉっとしてあげることにしました。
毎日ボブは縁側で何時間も過ごしました。
ボブは9歳まで生きましたが、その習慣は死ぬ前日までかかすことはなかったのです。
大好きなおじいちゃんと3年過ごし
おじいちゃんの思い出と6年過ごした
幸せなボブの一生でした。
『犬が教えてくれたこと』より引用